odeko2006-04-26

シアターコクーン

待ちに待ったコクーン歌舞伎へ行ってきました!第一回公演で上演された「東海道四谷怪談」が今回の演目です。
今回は南番・北番と演出の違う2つのバージョンで上演されたのですが、歌舞伎初心者の自分には何のことやら?さっぱり解らず、ベーシックな内容であろう南番を選択しました。後から聞くと、南番が第一回公演を串田演出で蘇らせたバージョンで、北番が南番では上演されない場面を加えたうえ新しい試みに挑戦したバージョンだったようです。
そんな北番では音楽も現代風の物を使っていたそうなので、舞台の中にいる役者と照明と音楽の歌舞伎らしい姿を体感したかった最初の歌舞伎鑑賞としては南番で正解だったかな。「バタ!バタ!バタバタバタァァ!」っと音をたてるツケ打ち(というらしい)の音がたまらなく好きです。
以下長文&ネタバレ注意です。

  • 演出・美術

 串田和美

  • 南番 配役

 お岩・小仏小平・佐藤与茂七/中村勘三郎民谷伊右衛門中村橋之助
 お梅/中村七之助、按摩宅悦/片岡亀蔵、四谷左門/中村源左衛門
 伊藤喜兵衛・お熊・舞台裏/笹野高史、直助権兵衛/坂東弥十郎
 お袖/中村扇雀

  • あらすじ(ざっくりです)

金銭問題でお岩と離縁させられた伊右衛門は、お岩の父親である四谷左門を逆恨みし刀で切ってしまう。お岩には自分が切ったことを隠し、敵討ちの為にと復縁する。男の子を産んだお岩は産後の経過が悪く床に付く日々、伊右衛門は傘張りの内職で生計を立てるが、そんな日々に嫌気がさしていた。
そんな伊右衛門に一目惚れしたのが高家である伊藤喜兵衛の孫娘お梅。伊藤喜兵衛は孫の思いをかなえるため、顔が醜くなる薬をお岩に渡し伊右衛門とお岩を別れさせようとしむける。
その事実を知ったお岩だが、宅悦ともみ合ううちに刀でのどを切り、伊右衛門を恨みながら死んでしまう。
伊右衛門の元へお梅は嫁入りしたが、お岩の怨念が伊藤家を滅ぼし伊右衛門を翻弄する…

前日は遠足前の子供のようにワクワクして寝られませんでした。当日着ていく着物を何度も試着したり畳んだり…コクーンに到着したのは昼の部が終わってお客さんが退場した直後(開演の2時間近くも前でした)、偶然にもまだ開いていた入口でパンフレット(1,500円)を購入できたので江戸東京博物館で予習したときの教訓から喫茶店で熟読。
うっすら内容を知っている四谷怪談とはいえ、細かいところはチンプンカンプン?意外と登場人物が沢山いることにまずビックリです。あらすじを読んでいて誰が誰だか混乱しつつもなんとか頭が整理されてきました。あとは役者の演技に集中するだけです!!
1階の前方は平場席という座敷状態の1等席、自分達はその後方にある1等椅子席。平場席に3時間以上も座っているのは辛そうですが、特に花道のような物はないので平場席の通路を役者達は歩き回り、人と人の間をかき分けるように通り抜けていくのは羨ましかった…1列目の人なんかは役者との距離が1mくらいなのではないでしょうか。
さて、1幕はお岩や伊右衛門をはじめとしたそれぞれ登場人物達の人間模様が演じられていきます。おそらくストーリーを把握していなかったらこの時点で何がなんだか解らなくなっていたことでしょう。1人3役の勘三郎さんは与茂七で登場し、小平で登場し、お岩で登場し…男らしく堂々と振る舞っていたかと思えば弱々しい男になり、病弱な女を演じる。それぞれのキャラクターを別人が演じているような切り替えがとても素晴らしかった。
お岩が伊藤家に感謝しながら薬を飲むシーンは何とも切なく、毒を盛られたお岩の顔が醜くなっていくあたりなど、それまでのどこか陽気な雰囲気とは一転し空気がピーンと張りつめて胸が苦しくなります。伊右衛門が子供の着物や蚊屋までも持っていこうとするのを必死で止めるお岩、全てを知って伊藤家へ行く為に母の形見の櫛で髪をすくお岩の姿は本当に心が痛くなります(ん〜平場の近距離で観たかった)。
そしてお岩が刀で喉を貫き絶命する…隣のお客さんが猛烈に飛び上がって驚いていたので、自分も猛烈にビックリしましたよ。そして勘三郎さんは小平に早変わり!お見事です。

2幕は1幕とは雰囲気がガラリと変わり川辺のシーン。伊右衛門が釣りをしているとガバァ〜!!水の中からお岩がぁ〜と思ったら小平にぃ〜〜勘三郎さん、どうなってるんですか??その早変わり…??(これが戸板返しってやつのようです。)その後も大きな提灯の中からドビャァ〜とお岩さん…思わず絶叫「ギャォゥ!」お岩さんが浮遊してます、、、かと思えば平場席からお岩さん「ギャァァァ〜」会場後からは「キャ〜」「ヲォォ!!」泣いてる人にキョロキョロしてる人…会場内は大パニックです。そして自分は大興奮!!(んん〜平場で恐怖に怯えたかった)

歌舞伎独特の見栄を決めるシーンでは客席からは「中村屋!」の掛け声が飛び交っています。おぉ〜これぞ歌舞伎。本水を使っての格闘シーン!平場の3列目くらいはビニールポンチョに防水シートどうやらビショビショのようです(着物じゃ最前列はきついかな!?)。天井から大量の雪が舞い散る中での格闘シーンはスローモーションのような動きでなんとも魅了させてくれます。

2幕は一気に突っ走る感じで舞台と客席の一体感がたまりません。歌舞伎って本来はこういった物なのではないでしょうか?2回のカーテンコールにスタンディングオベーション、かしこまって観なきゃ行けないなんて感じていた以前の自分はどこへやら、素晴らしき大衆演劇ですね。今回は椅子席のど真ん中で観たのですが、次回は平場席の後方下手側、ここがベストポジションじゃないかな。
そうそう今回の公演は日程未定ですがテレビ放映もされるそうです。そして来年の7月にNY公演が決定したそうです、行ってみたいなぁ。。。