「ALWAYS 三丁目の夕日」を観てきました。まだまだかなりのお客さんで館内が混雑していたのには驚き。

東京タワーが完成する昭和33年東京下町の夕日町三丁目。自動車修理工場「鈴木オート」に暮らす父親の則文(堤真一)・母親のトモエ(薬師丸ひろ子)・息子の一平(小清水一揮)。集団就職で上京してくる星野六子(堀北真希)。向かいの駄菓子屋に住む茶川竜之介(吉岡秀隆)。一杯飲み屋のおかみのヒロミ(小雪)・引き取り手の無い少年の淳之介(須賀健太)…といった個性豊かな住民達が繰り広げる人情物語。

ストーリーは至ってシンプル、とても解りやすいです。映し出される風景はスタジオや屋外に作られた巨大セットと、ブルーバックにミニュチュア撮影を合成したVFXで見事に再現された昭和33年の東京(といってもまだ生まれていませんが…)。なんとなく横浜のラーメン博物館や池袋のナンジャタウンを思わせる雰囲気ですが、こだわりにこだわって用意された小道具達はメチャメチャリアルに時代を表現していて、これを見るだけでも価値あり。
笑ったりウルウルさせられているうちに、気が付けばいつのまにか物語の中に吸い込まれ2時間13分なんてあっという間でした。

この後、ネタバレ有り。

駄菓子屋・フラフープ・空き缶の竹馬(ポックリ)・銀玉鉄砲・輪ゴム飛行機…懐かしいですね。自分が子供の頃にもかすかにこんな遊びをしていました。隣近所の子供達が集まって、学年なんて関係なくみんなでおもいっきり、それこそ映画の子供達のように泥だらけになっていたのを思い出します。
お湯を入れて使う湯たんぽやどてら、テレビにかけられた布なんかもお婆ちゃん家でよく目にした光景でした。ミゼット・固い紙の切符・豆腐売りの少年、舗装されていない道路なんて結構あったなあ〜
そんなことを考えていると最初の頃はストーリーに集中できないこともしばしば…「あっ!懐かしい。」なんて思いが頭をよぎってしまうのです。

昭和33年の春から物語は始まり町が正月準備に明け暮れる冬で終わるのですが、終わって欲しくなかった。このままずっと住人達の生活や彼らの今後を観ていたかった、というのが見終わった直後の感想。

  • 春・集団就職で上京して来た六子は立派なビルヂングの自動車会社に就職すると思いきや、そこは町の小さな修理工場。堀北真希は東北弁の田舎娘を見事に演じていました。お婆ちゃんも東北弁なので妙な親近感を感じてしまいます。一方茶川は飲み屋のヒロミに恋心をいだき引き取り手の無い少年の淳之介を預かることに。
  • 夏・六子が鈴木オートに馴染みだし鈴木オートには初めてテレビが家やってきます。力道山は見たこと無いけど、昔のプロレスは楽しかったな〜あんな風に力一杯応援してたもん。一方淳之介は茶川の書く冒険小説「少年冒険団」をきっかけに仲良しに。淳之介がノートに書いていた未来小説を茶川が盗作するんだけど、「少年冒険団」に掲載された作品を見て淳之介が泣いちゃうんだ。感動して泣いてしまう、素直にうれしいって。真っすぐで透明な子供の心が年をとっていくに従って理解できなくなっちゃうんだよな…
  • 秋・淳之介と一平が淳之介の母親を探しにプチ冒険。結局母親とは会えないけれど、会いたい気持ちと会えない現実を子供心にちゃんと理解しているんだね。家に帰って来た時に心配していた茶川が張り手一発!!「お前とは縁もゆかりも無いんだから」って台詞が茶川の優しさなんだろうな。
  • 冬・雪の降るクリスマス。田舎の母親から来ていた手紙を見せられ、自分は口減らしだと勘違いしていた六子が母親の愛情を痛感、母親って大きな存在だよな。。。自分もよく力をもらいます。茶川が淳之介にお金を借りてまでプレゼントする万年筆、血のつながりよりも心のつながりがやっぱり大切なのかな?愛情が無い親族より愛情のある他人。まあ夫婦だってもともとは他人だもんな。そして茶川がヒロミにプレゼントする透明の指輪、素敵なシーンです。

できればヒロミもハッピーエンドであって欲しかった。いや、心の幸せを手に入れたのかもしれない。最後の笑顔はとっても素敵だったから。

鈴木オートに「 三種の神器」がそろった時、捨てられた古い冷蔵庫を見つめる氷屋の姿は切なかった。「お金で買えないものは無い!」なんて言っている人もいるけれど、買えないものあるよなやっぱり。
近所の人がみんな知り合いでケンカして助け合って夢に向かって力一杯生きてた時代があったんだよ。便利で不自由しない今だけど、薄っぺらくて冷たい社会にはなって欲しくない。メールで何でも伝わってしまう今だからこそ、足を運んで顔を見て温度を感じて人と付き合っていくが大切なんだな。
人とコミュニケーションとることって楽しいことだし心が温まることだもん。